第1章うつ病との戦い-(13)うつ病と向き合えない原因

(13)うつ病と向き合えないエリート意識

自分のような人がどれくらいいるか分からないが、うつ病という病気と向き合えない人も多いのではないかと思う。病気と向き合うということは、その病気をきちんと理解して、適切な対応をするということである。特に精神的な病気は、この「向き合う」というプロセスが大事だと思う。実際に「向き合う」事が大事だと思ったのは最近になってからなので、その前に何故自分が向き合うことが出来なかったのかを書きたいと思う。

原因は、簡単に言うと、うつ病に対する認識の甘さ、エリート意識、プライド、思考方法、認知の歪み等々である。

「こころの風邪」

うつ病は「こころの風邪」と言われているが、実際はそんなに軽いものではない。しかし、「こころの風邪」という言い方をする理由も分かる。自殺する人の割合で2番目に多いのがうつ病患者である。それを考えると、うつ病になった人に「治らない重病」だとか、「深刻な病気です」と言ってしまうと、それでなくても精神的に不安定なのに、自殺する人が増えるのではないかと思う。よって、命を落とす人を減らすためにも、「こころの風邪」で誰でもなる可能性があると言った方が、良いのであろう。

しかし、それを真に受けてしまい、風邪であれば薬を飲んでいれば大丈夫だと思う人もいるのではないだろうか。それによって、もっと早く治るものも治らず、再発を繰り返し、経済的に苦しい状況になる可能性は大きい。現に自分がそうだからである。自分がこのサイトを立ち上げた最も大きな理由はこれを伝えたいためである。

自分の場合更に、うつ病になるまでかなり順調に人生を謳歌していたということも、なかなか病気と向き合うことが出来なかった理由であると思っている。小学校から常に成績は優秀で、スポーツも万能であった。高校・大学も一流の学校に行き、就職先も一流であった。会社に入っても出世が一番早く、周りから見ればエリートであった。母親には常に一番でいることと、正義のために活動することを教えられていたような気がする。また、ちょっとの努力で出来てしまったので、勘違いしてしまっていた。

うつ病のきっかけ

きっかけはちょっとした事であった。それまでの実績を買われて、会社の新規プロジェクトの立ち上げを任せられることになった。自分としては遣り甲斐を新しいことという事で遣り甲斐を感じていた。しかし、1年経過しても実績を出すことが出来なかった。当時の経済状況を考えれば難しいタスクだったので、自分としては精一杯やっていたので仕方ないと思っていた。そんな時に社長からいきなり自分の上に上司を付けると言われた。自分として、今までの成功があるため、上司をいきなり付けられたことに対して納得がいかなかった。自分のプライドが許さなかったのである。社長や新しい上司と衝突をして、精神的におかしくなってしまった。当時、うつ病は様々なビジネス雑誌の特集で取り上げられており、症状を比較すると自分に全てと言って良いほど当てはまった。不眠、早朝覚醒、食欲不振、気力の低下、思考停止等々、とにかく会社に行けなくなってしまったのである。精神科で抑うつ病と診断された。

正直うつ病と診断されたとき、泣いたが、同時にホッとしたのを覚えている。泣いたのは、自分が今までエリートとして頑張ってきたのに、今回成功出来なかった悔しさと情けなさであった。ホッとしたのは、うつ病が「こころの風邪」であり、ちょっと休めばまた元気になると思ったからである。

メンタル・クリニックに通い、抗うつ薬を服用するようになると気分は改善する。そうすると、エリートである自分が戻ってくる。何故エリートの自分がこんな思いをしなければならないのだと思う。これは全て会社や上司のせいだと責任を他人に向ける。エリートだから自分が悪いわけが無いのである。このような「思考方法」や「認知の歪み」が原因であることは後に分かることだが、この時点では人が悪いとしか思っていなかった。薬が効いて来ると当然エリートの自分がいるので、恥ずかしくて元の会社に戻る気がしない。周りの人に精神障害者と思われるのが怖いし、恥ずかしいし、とにかく自分のプライドが許さないのである。よって転職活動をする。最初の転職はスムーズにいった。2回目もスムーズであった。それぞれの会社には1年少ししかいなかったが、転職はスムーズに行うことが出来た。また、ある程度病気を誤魔化しながら仕事をしていたので上手くいかなかったが、それなりに理由を付けて自由に会社生活を送っていた。

何とか生活していたので、病気と向き合おうとしなかったのである。しかし、次の会社ではあまりにも規則が厳しく、自由に会社生活を送ることが出来ず、体調を崩して2回目の休職をすることになってしまうことになる。そこでも初めは、転職をしようと試みるが、なかなか条件の合う会社が見つからないし、良いと思っても採用までいかないのである。そうなると焦る。転職出来ないことについてもそうだし、それまでにかなり貯金を使い果たしてしまっていたため、経済的にも全く余裕が無くなる。もうどうしようも無くなって初めて何故自分の病気は治らないのかと疑問に思い、いろいろと調べるようになる。

そこから本当の意味で、「うつ病との戦い」が始まる。

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